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社長失格・失敗から学べ

グーグルのアドワーズというサービスを知っているだろうか。検索エンジンの会社であったグーグルが、一気にIT業界最大の巨人に変貌する切っ掛けになったサービスだ。グーグルで検索したキーワードに関連する広告を検索結果の横に表示する、という呆れる程シンプルで言われてしまえば思い付かなかったのがおかしいくらいのアイデアだ。だが、これによって単なるロボット型検索エンジンとして当時ヤフーなどと鎬を削っていたグーグルは大きく飛躍する事になる。もちろんこの成功には検索エンジンとして成功していた事が重要な前提条件になっている。

このグーグルのアドワーズがサービス開始したのが2002年の秋頃だった。

だが、これに先立つ事七年ほど過去に、ある日本のベンチャー企業がこのグーグルアドワーズを完全先取りしたサービスを行って日本中の注目を浴び、そして倒産していった事をどれだけの人が覚えているだろうか。

本書はその広告掲載型の無料プロバイダービジネスを提供する会社、「ハイパーネット」の社長が書いた倒産記録である。

社長失格」は文字通り、ハイパーネットが日本中の注目を浴び、ビル・ゲイツに買収提案を受けたり、アメリカのナスダック上場間近とまで言われる程の成功を納めかけながらも、ほんの数年で倒産してしまった熱狂を当事者の視点で記録したものだ。

そして「失敗から学べ!」はその倒産の教訓について説明したものだ。

ここからは個人的な感想。社長失格はおもしろかった。以前、会社を起業した人間が辿るパターンを小説仕立てにした「成功者の告白」という本の書評を書いたけど、この社長失格はその元ネタなんじゃないかとおもうくらい同じ展開だったりする。

失敗から学べ!」はまだ半分くらいしか読んでないけど、正直、あんまりおもしろくないなー。「入門ベンチャーファイナンス」の書評を以前書いたけど、経済学部の一年生レベルの知識を実体験から説明してるって程度でちょっと…退屈かなあ。

だが、金融自由化前の本当に日本のベンチャーが戦後以来の人気だった時期に、大学にもいかないでアイデア一本で社長やってる人間としてはそんなもんなのかも。(いや、しかし、明らかに幹部経営陣にアメリカでMBA取得した人間とかもいたはずで、社長の資本政策が普通に間違っている事を指摘する人間はいなかっったのだろうか…っていう気がしてきた)

追記:ハイパーネットが倒産した97年って山一証券が倒産した年か。日本で直接金融によるエクイティ・ファイナンスをする社会的な環境はまだ整ってなかったのだろうな。そういやスティグリッツも似た事言っていたな。

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