chu-ken.info/text/2008

「1秒!」で財務諸表を読む方法

小宮一慶「一秒で財務諸表を読む方法」も読了。会計の入門書は何冊かかじってきたが、本書みたいな超初心者向けの本を読む方が近道のような気がしてきた。本書で、会計に最初に挫折するのは、税理士にでもならない限り不必要な「仕訳」や「税務会計」の考え方をいきなりマスターしようとするからだ、という指摘には膝を打った。

会計を経営の道具として学ぶ場合には、仕訳の細かい知識は邪魔にすらなるかもしれないのね。また、会計と一言で言っても、税務会計、財務会計、管理会計などなど様々な考え方が存在するのだという基本すら知らなかった。なんだかなー。

あと、LBOの手法を会計的な側面から説明しているのも非常に分かりやすかった。トヨタは無借金経営をしているのは大嘘っていうのも驚き。また、エクイティとデットとでは調達コストが全く違うというのも知らなかった。会計の理論では、国債が一番確実な投資なので、この国債の利率よりも低い運用をエクイティの部分で行うのは、株主に対する怠慢になるのか。このへんのロジックは正直、言われないと気付かないが、確かに筋が通っている。しかし、この理屈は、会社に滅私奉公して取締役なり役員なりになった古いサラリーマン社長には受け入れがたい理屈なのではないだろうか。会社を私物化しているという自覚が無ければなおさらそうだろう。

あと、いわゆる雇用賃金の下方硬直性にまつわる議論なのだけど、このあたりは行動経済学で説明されていたプロスペクト理論の理屈とも関係しそうだ。結局、下方硬直性の強い賃金を引き下げるにはインフレが続く事が必須なのだろう。

会計という眼鏡を通して経済活動を観察する入門書としては良心的な本だと思う。

Valid XHTML 1.0 Strict Valid CSS!

Copyright (C) 2003-2008 chu-ken all rights reserved