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一生懸命って素敵なこと

林文子「一生懸命って素敵なこと」を読む。著者は、現在、日産の販売会社の代表取締役を勤める方。

学歴は高卒ながら、ホンダのトップセールス、BMW日本法人代表取締役、再建中のダイエーCEOなどを歴任して現職という、ある意味、働く女性として最高のキャリアを進んでいる人だ。

最近、営業系の本をちょこちょこ読んで、それを自分の知識体系に組み込んで裏打ちして検証するっていう作業をやっているんだけど、やはり最高峰の営業職には女性的な資質が必須のようだな、と痛感している。男性に顕著なのだけど、相手を説得して言いくるめたり、その製品の良さを相手にアピールする、みたいな営業のやり方は二流か三流止まりなのだな、と。同時に読み進めているマーケティングという本では、冷酷な事に、営業が相手に話した情報量が多いほど、受注は少ないらしい。(広範な実証研究では営業職の説明量と受注量には明確な負の相関関係が認められる)とどのつまり、相手を論破するなり、説得するなりという攻めの姿勢での営業は、かえって顧客に嫌われるという訳だ。

もちろん、著者にも様々な挫折があったようだ。高卒で就職した東洋レーヨンでは、実に昔の日本の雇用状況を絵に描いたように、「女性社員は男性社員の結婚相手」として雇用される。著者はそういった当時の「当たり前」に違和感を抱き、転々と職を変えていく。

また、営業職を全く経験した事が無い状態から、ただ車が好き、という気持ちだけで訪問販売を毎日百件繰り返したというのも脱帽。以前「御社の営業が駄目な理由」で書いたが、営業職の平均的な人物は精々50件の訪問販売をするのが限界なのだ。

このあたりは時代背景もあったのだろうな、とは思う。まだまだ車産業は成長途上だったし、需要はそれなりに未開拓だったのだろう。今、車の訪問セールスをやっても著者のような業績を挙げる事が出来たか非常に疑問だ。

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